「現実的脱原発」で長期的なエネルギー安定供給を〜要約版〜
東海村のJCO事故、三重県の芦浜原発立地の失敗、アラビア石油の採掘権延長の失敗などにより、日本のエネルギー政策は今、大きな転換を迫られている。
太郎塾は、転換期を迎えた日本のエネルギー政策についての活発な議論を喚起するために、持続可能かつ実現可能な長期的エネルギー安定供給のシナリオとして、自然エネルギー起源の水素と天然ガスを主軸とした2050年までの電力供給構想を公表する。
●なぜ脱原発が必要なのか●
大きな理由は二つある。ひとつは新規立地の問題であり、もうひとつは放射性廃棄物の最終処分場の問題である。
●太郎塾版シナリオ●
2050年までの半世紀に原子力発電から脱却し、水素(自然エネルギー起源による)と天然ガスを機軸燃料とし、これらの燃料を有効に利用するコージェネレーション(電熱併給)や燃料電池などの技術の普及を段階的に推進する―というのが我々の描くシナリオの概要である。
●構想を実現するために●
政策提言その一: 原子力フェイズアウト※を前提とした「エネルギー基本法」を
我々は、原子力フェイズアウトを前提とした「エネルギー基本法」の立法を提案する。
この基本法で明記されるべきは、以下の点である。
・ 持続可能かつ実現可能な長期的エネルギー安定供給を目指すこと
・ 原子力フェイズアウトを来世紀の半ばに向けて進めること
・ 自然エネルギーの大量導入に向けた総合的取り組みを進めること
・ 分散型コジェネによる熱エネルギーの利用を進めること
※「原子力フェイズアウト」
現在着工中のものを除いて原発の新規立地は行わず、現在稼動中の原発のうち寿命を迎えたものから順次廃炉し、二十一世紀の半ば頃に脱原発を実現すること。
政策提言その二:「総合エネルギー事業法」の制定
熱・電気の総合的供給を可能にする「総合エネルギー事業法」の検討を早急に開始することを提案する。
熱と電気の総合的供給を行う総合エネルギー供給ビジネスを育成するためには、「総合エネルギー事業法」により、以下の点が整備されることが望まれる。
・ 全エネルギー業界のエネルギー供給ネットワーク(送電網やパイプライン)のアクセス・ルール
・ 複合エネルギー供給事業の展開を後押しするためにネットワーク・アクセス価格の低額化方針
政策提言その三: 水素&天然ガスパイプラインの整備
国内の基幹ガスパイプライン整備をエネルギー戦略上必要なインフラと位置付け、整備を進めることを提案する。
政策提言その四: 国家主導で水素輸送・貯蔵技術の商業化を
国家主導による自然エネ起源の液体水素及びメタノール利用のための実証システムと、テスト的な商業システムの構築を提案する。
政策提言その五: 自然エネルギー普及(価格補助、そしてRPS)
過渡的に電源開発促進税(電促税)から自然エネルギーの高コスト分の補助を行い、環境が整った時点でRPS (再生可能エネルギー発電比率基準)へ移行することを提案する。さらに、この補助からRPSへの移行を明記した「自然エネルギー発電促進法」の制定を提案する。
●太郎塾版シナリオの数量的検証●
これまで述べてきた太郎塾版エネルギー政策の実現可能性を評価するために、以下に数量的検証を試みた。詳細は本論参照。
●結語:追い詰められてからではなく自ら哲学をもって変革を●
本論文で述べてきた通り、既存の原発推進路線の継続では、新規立地と放射性廃棄物の問題で、エネルギーの安定供給は根本から崩れてしまう。こうした危機に直面している現在、エネルギー長期展望についての、市民を含めた多様な利害関係者による開かれた議論が必要なのだ。
今回我々の示したエネルギー構想によって、こうした議論への扉が開かれることを願う。真に持続可能なエネルギーセキュリティの確保へ向けて、今、自ら哲学をもって変革しようとする決断が求められている。
最終更新日: 2006年8月28日
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